職員へのハラスメントが認定された前町長の辞職に伴う愛知県東郷町長選は9日、投開票され、無所属新顔で前町議会議長の石橋直季氏(38)が、同じく無所属新顔で前副町長の近藤悦規氏(60)を破り、初当選した。「悪い意味」で町の名が全国に知れ渡った東郷町。町民が望むハラスメントの撲滅に道筋をつけられるのか、県内最年少の現職首長となった石橋氏に託された。
「不名誉な形で有名になってしまったが、素晴らしい東郷町ということを示していきたい。皆様の声をしっかりと聴く町政をしたい」
9日夜、当選した石橋氏はそう決意を述べた。
開票結果は石橋氏1万479票、近藤氏5583票だった。当日有権者数3万4305人で、投票率(前回44・83%)は47・43%。
広がった東郷町の「悪いイメージ」
昨年11月、前町長の職員へのハラスメント問題が明らかになり、町民に動揺が走った。ことあるごとに、東郷町とハラスメントが各メディアで報じられた。
「県外、町外の人に東郷町って伝えると『ああ、あのハラスメントの』っていうことを絶対言われる。ここまで悪いイメージで全国的に有名になってしまったのが本当に悲しい」
そう語る町民の女性(49)は、汚名をそそぎ、ハラスメント問題に対応してほしいと石橋氏に一票を投じた。同じように、一票を託した町民の男性(44)は「前町長らはハラスメントを放置した。良い意味で、良い町に変えてほしい」と期待を寄せる。
名古屋市と豊田市の間に位置する人口4万人余りの「ベッドタウン」である東郷町。トップの辞職につながる発端は、男性職員が自ら町職員にアンケート調査をして前町長のハラスメントを訴えたこと。調査結果が町議全員に郵送され、発言の録音データも流出した。
「死ね」「お前らの脳みそは鳩の脳みそより小さい」。前町長の一連の言動について、町が設置した第三者委員会は4月、職員ら108人に対するパワハラ、セクハラ、マタハラを認定。5月2日、前町長は辞任した。
新たな舵取りを誰が担うのか。
名乗りを上げたのは「議長」で、続いたのが「副町長」だった。町長辞職を決定づけた第三者委の報告書は、「ハラスメントを黙認し、放置した」として、「副町長」の責任も指摘していた。
「ハラスメント放置」指摘の前副町長に町民は
その当人の近藤氏は、なぜ立候補したのか。
複数の関係者によると、前町…