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彩香は弘子への好意を同僚たちに打ち明ける「彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる」から©Sal Jiang/双葉社

 朝日新聞夕刊ジェンダー面の連載「オトナの保健室」では、今回から「恋愛」について考えます。「性」との結びつきは強そうだけど、恋の道筋は人それぞれ。ドラマの続編が放送中の漫画「彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる」作者のSal Jiangさんは、そんな違いが「面白い」と言います。

  • 連載「オトナの保健室」

年上世代のギャップを描く

彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる

 同じ職場の弘子先輩(森カンナ)が大好きな彩香(加藤史帆)。日々アピールするも相手にされず……と思っていたら、実は弘子もドキドキしっぱなし。そんなすれ違いの続いた2人はついに結ばれ、続編ドラマ「2nd Stage」(関西はMBS・木曜深夜1時29分、見逃し配信はFODなど)で描かれるのは、カップルのその後。「初夜」をめぐって、またしても勘違いが始まって――。

 ――原作は、彩香が職場の先輩である弘子に恋心をぶつける物語。弘子は彩香がノンケ(異性愛者)で思わせぶりなだけと勘違いし、すれ違いが続くラブコメでした。発想の原点は。

 しがらみが少なく恋愛にまっすぐ走っていける現代の子と、今まで自分が同性愛者であることを隠して生きてきた年上世代。そのギャップを描きたかったんです。

 先人が切りひらいてくれて「レズビアンである」「同性愛者である」ということが言いやすくなった。そんな今だからこそ描ける、という感触がありました。

 それで「追いかける後輩と逃げる先輩」のような構図になった、という感じですね。

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Sal Jiangさんの自画像=双葉社提供

Sal Jiang

 さる・ちゃん 2019年、短編「ねこいばなばなし」(祥文社)で漫画家デビュー。Webアクションで20~23年に連載した「彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる」(双葉社、コミックス全3巻)はMBSで24年にドラマ化。続編ドラマの「原案・監修」も務める。ペンネームはニホンザルが好きなことから。

 私自身が女だから、というのもあって、恋愛に限らず実際に自分の目で見て「いいな」と思った女性同士の関係性をもとに描いています。

 「あるある」的なところで言えば、女性は女性に対して安心感があるから、ボディータッチが増えたり、心の距離を急に詰めたりしやすいと思うんです。

 そこにレズビアンの人たちは振り回されている節があるな、と。いろいろ見聞きしてそう思っていたので、物語にも取り入れるようにしました。

 自分としては悲しい物語ではなく、情けなく、もどかしくすれ違うレズビアンの面白い恋愛を描いたつもりです。

 ――彩香はもともと恋愛に興味がなかったけれど、弘子への恋に落ちて猛アタックを始めたという設定でした。

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弘子(左)に好意を伝える彩香「彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる」から©Sal Jiang/双葉社

 彩香ちゃんは誰にでも共感してもらえるタイプのキャラではないと思っていて。みんなが通ってきた恋愛経験とか恋話とかをしてこなかった人がいるかもね。こういう何の遠慮もない人がいるかもね。そんな「提案」みたいなつもりで描きました。

 「女が好きな女である」という自覚を持った人の描写は、弘子先輩を通して全力でやったので、彩香ちゃんはその対比に見えたら面白いと思います。

身内に理解深くない人がいたら?

 ――6月26日からドラマの続編の放送が始まりました。弘子と恋人として結ばれた彩香の、「初夜を迎えられていない」という悩みが出発点になっています。

 企画段階から、私も参加してアイデアを出しあいました。追いかける恋愛が成就したその先で、何がしたいか。本当にいろいろな案が出ました。

 彩香ちゃんは男女ともに経験がない。平たく言えばセックスを知らないわけです。対して弘子先輩は数限りなくいろんな女を抱いてきた。その対比を出そうという話になりました。

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弘子(左、森カンナ)と彩香(加藤史帆)©「彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる」製作委員会・MBS

 もう一つ「やりたい」と意見したことがあります。

 弘子は、周囲に自分がレズビ…

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