今月、8年ぶりに国連の委員会が日本のジェンダー平等の取り組みを審査する。その行方に注目する一人が、長野県上田市に住む会社員、礒野仁美さん(29)だ。会社で、地域で日々感じるモヤモヤとつながっていると思うから。

国連での審議、オンラインでも

女性の人権に関する「世界の憲法」といわれる女性差別撤廃条約にもとづき、国連の女性差別撤廃委員会が、日本政府によるジェンダー平等への取り組みを8年ぶりに審査します。
審査は17日の日本時間午後5時~0時、国連ウェブTV(https://webtv.un.org/en 別ウインドウで開きます)で傍聴できます。

 神奈川県の出身。大学を卒業し、上田市の製造業の会社に就職した。モヤモヤは、4年前の入社直後から始まった。課長や部長といった80人ほどの管理職のうち女性は2人しかいなかった。同期の女性社員が重たい器具を運んでいたとき、ベテランの男性社員が声をかけるのが聞こえた。「いいお嫁さんになるね」

 なんか、モヤモヤしたんだけど。年の近い同僚の女性に打ち明けると、「それ、やばい発言ですよ」と共感してくれた。このとき「考えすぎ」なんて言われていたらこの先のすべては起きなかったと思う。話せる仲間を得て、礒野さんにスイッチが入った。

勉強会で話す礒野仁美さん=本人提供

 ジェンダーやフェミニズムにかかわる本を読みあさり、長野県が開くオンライン無料講座でも学んだ。ニュースとして聞いたことはあっても、関係ないと思っていた「ジェンダーギャップ118位」の現実が、急に自分に降りかかってきたようだった。同僚と2人、映画を見て感想を語り合い、ジェンダーについて学ぶ場もつくった。

モヤモヤは世界とつながっていた

 昨年5月、東京都内の勉強会に出かけ、知ったのが国連の女性差別撤廃条約だ。「女性に関わる世界の憲法」とも呼ばれ、日本を含む189カ国が批准。各国がこの条約を手がかりにジェンダー平等の取り組みを進めていると知り驚いた。

 なぜ選択的夫婦別姓が進まないのか、なぜもっと手軽に避妊薬にアクセスできないのか、なぜこんなに国会議員に女性がすくないのか――。そのすべては、この条約とかかわっていた。「モヤモヤは私の考えすぎなんかじゃなく、むしろ世界の潮流そのものだったんだ」と思った。

 条約をめぐる課題の一つが、実効性を高めるための文書「選択議定書」を日本は批准していないことだ。条約を締結する189カ国中115カ国が批准しているが、日本政府は「検討中」という姿勢を変えない。

 選択議定書には、差別を国内で訴えても救済されない場合に国際機関に訴えることができる「個人通報制度」が盛り込まれている。ここ数年、「女性の権利を国際水準に」と、全国の地方議会から早期批准を求める意見書の採択が相次いでいる。

 ところが長野県には、採択を…

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