福音館書店の月刊誌「母の友」の最終号が3日、発売された。2015年から編集長を務めた伊藤康(こう)さんが4日夜、東京都世田谷区の書店であったトークイベントで72年の歩みを紹介し、読者や作家への感謝の思いを語った。
「母の友」は、児童書を出版する福音館書店が1953年に創刊した。「幼い子と共に生きる人への生活文化雑誌」と位置づけ、子育ての「ハウツー本」というより、作家や画家の書き下ろしの童話やエッセー、インタビュー、寄稿、読者の投稿などを通して、「言葉」に光を当ててきた。
他社の広告を載せないのも雑誌としては珍しかった。だが「昨今の情報メディアをめぐる環境の大きな変化」を理由に昨年10月、今年3月号での休刊を発表した。
最終号のテーマは「『生きる』を探しに」。伊藤さんは、2022年に亡くなった松居直(ただし)さんが編集長として立ち上げたことを紹介した。松居さんは、3人の兄を戦中戦後に戦場や病気で亡くした経験から「生きるということを皆さんと考えたいと思って、この雑誌を作った」と生前に繰り返していたという。「だから休刊が決まって間もなく、最終号のテーマも固まりました」
■編集長「言葉に負けちゃう」…