桜が見頃を迎えた3月下旬、東京都豊島区の区立南長崎はらっぱ公園の一角で、小学6年の中島寛人さん(11)と、学校の同級生の添谷勇輝さん(11)は、工作用紙で「宝くじ」を作っていた。2人は「いっぱい売ってもうけるんだ。とにかく大金を稼ぎたい」と張り切っていた。

「こどものまち」で「くじ屋」を起業した小6の中島寛人さん(左)と添谷勇輝さん(左から2人目)=3月28日、東京都豊島区

 ここは、春休み中に7日間限定で登場する「こどものまち」の中だ。公園の一角と隣接するビル内が敷地で、大人は立ち入り禁止。小中学生の子どもが自分たちで作り上げる、子どものためのまちだ。任意団体「PLAY―WORK実行委員会」の主催で、今年で8回目の開催となる。

 まちには工房やデパート、大工といった仕事のほか、議会や銀行、ハローワークなどもある。仕事を楽しみつつ、まちの通貨で支払われる給料をもらい、税金を払った残りのお金で商品を買ったり、ゲームを楽しんだりできる。

 大まかな流れはあるが、細かなルールは子どもたちで決める。「税率が高い」と声が上がり、税率が下がった日もあった。子ども同士での交渉も頻繁に起きる。1日だけ参加の子、連日参加の子と様々だが、新しいもの、前日から引き継がれたものが入り交じり、まちが発展していく。

「こどものまち」で遊ぼう

 大人がいない、子どものための「こどものまち」は全国に広がっています。春休み中、東京都豊島区内に作られた「まち」に密着し、のびのび過ごす小学生たちの姿を見つめました。全5回の連載の初回です。

 中島さんと添谷さんは2年前に初めてまちに参加した。昨年、終盤に「くじ屋」を起業してもうけた経験から、今年は「大もうけ」を目指して初日から起業することを決めて来た。まちでは起業もでき、開業資金はかかるが、売り上げから税金を引いた額がすべて自分のものになる。

 「起業は絶対やった方が楽しい。起業すれば売り上げが全部もうけになるから、めちゃくちゃ稼げるんだよ」と中島さん。添谷さんは「何かに使うとかじゃなくて、稼いで大金を持ってるだけでうれしいんだ」と話す。

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