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各部の部局長らにあてた神戸大の学長通知=2025年6月17日午後5時0分、宮坂奈津撮影
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 神戸大(神戸市灘区)で今年度、学長名で出された「通知」が学内に波紋を広げている。安全保障分野の研究を支援する国の助成制度に対し、応募の「自粛」から「解禁」に方針転換するというものだ。教員や学生からは「研究が将来的に軍事転用されるおそれが出てくるのでは」と懸念する声も上がる。

 防衛装備庁は2015年、兵器など防衛装備品の開発にもつながる可能性がある研究に政府が資金を出す「安全保障技術研究推進制度」を始めた。

 基礎的な研究を大学などの研究機関に委託して研究費を支給するというもので、研究機関からの応募を外部有識者が審査し、決定する。研究規模に応じて年間1300万円~5年間で20億円が支給される。

 神戸大は17年、当時の学長通知で「大学から生まれる研究成果等は、軍事目的ではなく平和利用されるべきだ」として、制度への応募自粛の方針を示した。

学長通知、有志が反対声明

 だが今年4月30日付で藤沢正人学長が各部局の幹部宛てに出した通知では「同制度への応募を一律に禁止するという本学の方針を見直す」と記されていた。

 解禁の理由として、日本学術会議がここ数年の国会答弁などで「科学技術そのものを潜在的な転用可能性に応じて事前に評価し、規制することは容易とは言えない」といった見解を示していることを挙げた。

 これに対し、神戸大教職員組合の有志らは反対する声明を出した。5月23日に「学術会議の問題と、大学での軍事研究のあり方を考える」と題した緊急講演会を開催すると、学生や教員、市民ら約70人の参加があった。

 登壇した、科学史が専門の隠岐さや香・東大教授は、大学が軍事研究に対して自粛することが「学問の自由の侵害」だという意見もあるとした上で、こう指摘した。「最終的に研究成果がどのように使われるかについては、大学だけでなく学者個人の責任も問われる。そのあたりの意識が希薄になっていないか」

「戦争の緊張感高まっているのに…」

 緊急講演会を呼びかけた一人で神戸大国際人間科学部の井口克郎准教授は「平和のための研究活動という行動規範を投げ出した、突然の決定。十分な議論を経ずに進められているのは問題だ」と話す。

 講演会を聴いた同学部の男子学生(22)は「将来的に神戸大の研究が軍事転用される可能性が出てくることは喜ばしいことではない」と受け止める。

 科学史を学んでいるという女子学生(24)は「世界的に戦争への緊張感が高まっているこのタイミングでなぜ。大学側は教授会だけでなく学生にもわかるように伝えるべきだ」と話した。

大学側「正式なプロセス経ている」

 神戸大は朝日新聞の取材に「…

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