青森県立美術館では、詩情あふれる青の表現で知られる佐野ぬい(1932~2023)の回顧展が開かれている。出身大学の学長も務めた、戦後の日本洋画界の重要作家だ。
佐野は青森県弘前市生まれ。菓子店を営む文学好きの父のもと文化的な雰囲気の中で育った。
10代半ばで油彩画を習い始め、フランス映画と佐伯祐三の画集に憧れた。地元の百貨店をパリの街角に見立てて描いた女学校時代の作品「かくは入口」は、佐伯風のタッチがほほえましい。
佐野作品を象徴する「ぬいブルー」は、東京の女子美術大学在学中の「青い自画像」ですでに使われている。
1960年代に入ると、画面から具象的なモチーフが消失。当時の青は夜のようなダークブルーで、佐野が好んだフランス語風のサイン「nuit(ニュイ)(夜)」を思わせる。
母校の女子美に職も得て、画業は順風満帆だったかに見える。
だが、助手時代に出産すると…