Smiley face
写真・図版
朝日歌壇

短歌時評 山崎聡子

歌壇俳壇面で月1回掲載している「短歌時評」。今月は歌人の山崎聡子さんが、インターネット上で短歌コミュニティーが醸成され始めた2000年代初頭を振り返ります。

 2000年代初頭は、インターネット上に短歌のコミュニティーが醸成されはじめた、まさに黎明(れいめい)期だった。掲示板やメーリングリスト、参加者が1年かけて100首を詠んでいく「題詠マラソン」などは、愛好者同士の親密なおしゃべりの場のようであり、短歌を書きはじめたばかりの私の目にも新鮮に映った。その頃に名前を覚えた魅力的な歌人のなかに、6月に『とてもしずかな心臓ふたつ』が出版された村上きわみがいた。

 ぼくたちが ぼく/たち でしかないことの たんぽぽ畑あんなにきれい

 なつかしい未来 あなたともう一度にくんだりあいしあったりしたい

 一人称「ぼく」や平仮名書き…

共有