湧水町で2022年に収穫されたアーモンドの実=2023年3月14日午前10時42分、湧水町役場、中島健撮影

 「まちおこしの実」として鹿児島県湧水町が栽培を奨励してきたアーモンドが、じつは食用に適していないことが町が依頼した成分分析で判明した。町は例年、年明けに新たに苗木を植える生産者に補助金を出してきたが、今年はストップ。実のまま食べる以外の活用策を探っている。

 「日本一のアーモンドの里」をめざして、町が町有地に植樹を始めたのは2016年。当初は薄桃色の花が長く咲く花の名所をめざしていた。

 19年1月からは、実の活用も狙って苗木を植える生産者への補助制度を導入し、栽培を奨励し始めた。現時点で生産組合には32人が所属し、町内での栽培面積は7.2ヘクタールに膨らんでいる。

 アーモンドは植えてから実を収穫するまでに5年程度かかる。いち早く栽培を始めた生産者が初めて実を収穫したのは22年夏だった。

 町産業振興課によると、22年に収穫した完熟前の実の成分を分析したところ、食用部分の「仁」に食品衛生法の基準を超えるシアン化合物が含まれていたという。

 シアン化合物は、めまいやけいれんなどの中毒症状を引き起こす物質。ビワや梅の種などにも含まれることがあり、厚生労働省はビターアーモンドを含め、10ppmを超えると食用にできないと通知している。

 ただ、加工によって基準を下回る場合は違反にならないため、町は23年に収穫した実を焙煎(ばいせん)したうえで、改めて成分を分析した。

 だが、前年の分析より濃度は薄まったものの、いずれの実でも食用の基準を超えるシアン化合物が検出されたという。

 町が植えた品種は実の形が薄く、食用に適さない品種ではないかという指摘はあったが、苗木業者は「品種不明」と説明していた。

 まだ収穫量は少ないが、栽培面積が広がっているため、町や生産者は、シアン化合物が含まれない仁の外側をコンポートにしたり、化粧品の試作品をつくったりして、活用の見通しをつけようと試行錯誤している。町の担当者は「当初からいろんな活用法を検討しており、(検出を)プラスにとらえて製品化をめざしたい」と話す。

 生産者の一人、橋本隆朗さん(66)は「ショックはショックだけど、町が方針を示しているので、従うだけ」と話している。

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