国は「万が一」を想定していなかったのではないか――。
大津市で5月下旬、保護司の男性(60)が殺害された事件で、殺人容疑で逮捕されたのは保護観察中の男(35)だった。逮捕から15日で1週間。罪を犯した人の立ち直りを支えてきた滋賀県内の保護司たちからは不安の声が上がる。ただ、改めてやりがいを口にした保護司もいる。
殺害された男性は20年近い保護司の経験があり、5年ほど前、別の事件で保護観察となった男の担当となった。
県警によると、男性が死亡したとみられる5月24日夜は、男性宅での面接が予定されていた。
「こんな事件があったら、保護司になろうという人は出てこなくなる。安全に活動できるやり方を検討しないといけない」
定年後に保護司となった60代男性は、危機感をあらわにする。これまで少年を含めて数人を担当してきた。
主に自宅に招いて面接し、たまには観察対象者の家に行く。対象者は、男性の住所も携帯番号も知っている。
自宅で面接するのは、観察対象者が距離的に通いやすく、親しく接することもできるから。面接ではお菓子を食べながら趣味とか音楽の話をして、心を開いてもらうようにしている。「おっちゃん来たよー」とやって来て、ハイタッチして帰って行く対象者もいる。
トラブルとなった経験はない。それでも、事件には衝撃を受けた。
「『万が一』想定していなかったのでは」
保護司は国家公務員という位…