(7日、第107回全国高校野球選手権東東京大会2回戦 大山5―11広尾)
「やらされる野球からの脱却」には欠かせない存在だった。
五回裏無死一、三塁のピンチで、大山の捕手、岡田聖梧(3年)は制球難の先発平田成海(2年)に駆け寄った。「お前に任せるよ。一番自信のある球を投げてこい」
低めのカーブで空振り三振。その後も相手走者を三塁で刺すなどして、この回を1失点で切り抜けた。
入部した2年半前、新任の馬場拓己監督が掲げたのが「やらされる野球からの脱却」だった。当時の部員は2人だけ。放課後の教室を熱心に回る監督に応じ、岡田を含む今の3年生が集まった。
しかし、投手を志望する岡田に対し、監督は「捕手に専念してほしい」。目立たないポジションが不服で、昨秋には練習から足が遠のいた。
そんな時、「俺は岡ちゃんに球を受けてほしい」と声をかけてくれたのが平田だった。監督も「やってくれないかな」と寄り添ってくれた。
腹を決めてからの日々は楽しかった。監督が毎日、練習メニューの選択肢を示してくれる。選手主体で「小さな決断」を積み重ねていくうちに、チームの課題も克服されていった。
この日、岡田は仲間と声を掛けあい、相手の猛攻を粘り強くしのいだ。晴れやかな表情で試合を終え、気持ちが固まった。「野球はやめない。大学でもやりたい」