現場へ! 震災とオシラサマ(3)
白装束に身を包んだイタコが、神棚に並ぶ15本のロウソクに火をともす。
歌うようにお経を唱え、両手に持った一対のオシラサマを、頭上で大きく振ったり、互いに軽くぶつけたりする。踊りを舞っているようにも、人形を遊ばせているようにも見える。
かつて北東北の多くの家々で行われていた、オシラサマをまつる「アソバセ」。
人々は毎年、自宅や集会場などにイタコを招き、オシラサマに1枚ずつ布を着せたり、子どもに背負わせたりしてアソバセてきた。
青森県八戸市のイタコ・松田広子さん(52)は、現在もオシラサマのアソバセを続けている数少ない一人だ。
かつては頻繁に行われた信仰行事も、イタコが減り、オシラサマを置く家も少なくなったため、「年に10件ほどになってしまった」と言う。それでも、「人々がオシラサマに思いを寄せ続けている限り、私もイタコとしてアソバセを続けていくつもりです」。
92歳のイタコ・中村タケさんは「最後の盲目イタコ」と呼ばれる。
3歳ではしかにかかり両目の…