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 新たな感染症の世界的流行(パンデミック)に備える「パンデミック条約」が、世界保健機関(WHO)の総会で採択された。次のパンデミックは「もしかして起きるかも」ではなく、「いつ起きるか」という問題だ、と言われている。条約の意義や課題とは。感染症に詳しい岡部信彦・川崎市健康安全研究所参与に聞いた。

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川崎市健康安全研究所参与の岡部信彦さん

 ――条約の意義をどう考えますか?

 新型コロナウイルスが中国から報告された後、あっという間に世界中に広がったように、新たな感染症への対策は、国を超えた連携が必須です。

 それぞれの国の感染症対策は、その国の政治的・文化的背景の影響を受けますが、ウイルスなどの病原体はそうしたものを超えて広がります。

 次にパンデミックが起きたときにどうするか。国を超えて国際的に必要な、一定の考え方を示したものが今回の条約であり、WHOという国際機関にその議論をリードする役割が期待されている。一定の成果が出たことを歓迎しています。

 ――とくに、どこを評価していますか?

 疾患の発生状況(疫学情報)とともに、ウイルスなどの病原体や、その遺伝情報を共有し、薬やワクチンなどの早期開発につなげ、さらにそれを途上国にも供給できるようにすることが盛り込まれました。

 ワクチンが十分に途上国に行き渡らなかったのは、コロナで浮き彫りになった課題でしたが、実は2009~10年にパンデミックになった新型インフルエンザ(H1N1)の収束後、WHOのなかで、こうしたしくみが必要だとして議論が始まっていました。当時、私もその議論にメンバーの一人として参加していました。

途上国の反発「ワクチンまわってこない」

 ワクチンは、まずウイルスな…

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