朝日歌壇

うたをよむ 菅原百合絵

歌壇俳壇面のコラム「うたをよむ」。今回は歌人の菅原百合絵さんが、中東の分断やフランスでの自爆テロを詠んだ歌、加えて予知夢とも見える作品を取り上げ、世界や未来を映す鏡ともなる短歌について考察します。

 短歌は日本的な詩型だと言われるが、初期の和歌が万葉仮名によって表記された歴史や、漢詩的な着想からの濃密な影響を考えても、必ずしもそうとは言い切れない。そもそもの成り立ちに異邦性を孕(はら)む短歌が、世界に目を向け、時代を映す鏡となるのは当然とも言えよう。

 政権を支持する友が美しくこちらへリモコンを構える

 千種創一

 千種創一『砂丘律』では、中東に赴任した作者の生活と、テロや虐殺など緊迫した事件が地続きで描かれる。何気(なにげ)ない友人の仕草(しぐさ)ですら、銃口を向けられるように感じる――「政権」の背後には、それほどに深い分断が横たわっている。

 自爆テロはいまkamikazeと呼ばれをり若く死にゆくことのみ似たる

 松本実穂

 バタクラン劇場での大惨事に…

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