2025年8月3日、米ペンシルベニア州の空港で記者団と話すトランプ大統領=AP

 トランプ米大統領が返り咲いてから半年あまり。「トランプ主義」のもとには、異なる出自と思想を持つグループが混在している。多様な勢力を内包することで強さを発揮してきた2期目のトランプ氏だが、ここにきて亀裂も見え始めた。不安定な「連合」は、どこに向かうのか――。

「MAGA」にはどんな勢力が混在しているのか

 トランプ主義を支える人たちは「MAGA」と呼ばれる。トランプ氏が掲げる「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」というスローガンの略だ。MAGAの概念に正確な定義はないが、このスローガンに共感し、旧来のエリート政治に不満を募らせてきた人たちを指す。

 ただ、一言でトランプ主義と言っても、「特に一貫したイデオロギーを持っているようには見えない」とアラバマ大のジョージ・ホーリー准教授(米政治)は指摘する。「多くのジャーナリストや学者はトランプ主義のイデオロギー的起源を探し、一貫性を見いだそうと試みてきたが、私はこの試みにほぼ見切りをつけた」とホーリー准教授は言う。

 実際、MAGA勢力のなかでも重視するイデオロギーは様々だ。

 当初、注目されたのはかつて製造業が栄えたラストベルト(さびついた工業地帯)に住む白人の労働者階級だった。「エリート主義」に敵意を抱き、グローバル化によって仕事を奪われたとして、アメリカ・ファーストによる製造業の復活を望むような考え方を持つ。

 宗教保守と呼ばれ、中絶への反対や伝統的な家族観を重視する、キリスト教福音派やカトリック教徒の勢力も強い。リベラルなジェンダー教育などを「ウォーク(目覚めた思想)」と呼んでさげすみ、保守的な文化への回帰を目指すグループも存在感を増している。

 こうした勢力が重なり合いながら、トランプ主義を支えているのが現状だ。

 トランプ氏はエリート政治の一掃を掲げ、民主党だけでなく、旧来の共和党主流派とも闘うことで一体感を保ってきた。だが、自らが主流派となったいま、MAGAの中でも不和が露見しつつある。

 米軍のイラン核施設への空爆に対し、対外介入を嫌って支持者から反対の声があがったのはその一例だ。最近も、富豪エプスタイン氏の性犯罪事件をめぐって、一部のMAGA勢力がトランプ氏批判に転じたことが話題を呼んでいる。支持層のなかでも考えの合わない相手を「フェイクMAGA」と非難するような言動も保守系メディアでは飛び交っている。

明らかに異質な「テック右派」の参入

 そんな呉越同舟のトランプ主義に近年、異質な存在が加わった。「テック右派」と呼ばれる新たな勢力だ。

 1990年代から急速な成長…

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