「世界最大の島」に、閉じ込められてしまった。

 悪天候で翌日の飛行機が飛ばないと航空会社から連絡を受けたのは1月20日。2日連続のキャンセルだ。

 信号機が吹雪で揺れている。午前10時なのに、まだ薄暗い。

 ここは北極海に面した島、デンマーク自治領グリーンランド。トランプ米大統領の発言をきっかけに今、世界の「ホットスポット」の一つになっている。

グリーンランドの中心都市ヌークの風景=2025年1月18日、森岡みづほ撮影

 安全保障のため米国がグリーンランドを所有することが「絶対に必要だ」――。トランプ氏がSNSにそんな投稿をしたのは昨年12月だった。

 1月7日の記者会見では、管理下に置くために軍事・経済的な強制措置をとらないと約束するかと問われ、「確約できない。何かをしなければならなくなるかもしれない」と述べた。本気度の表れなのか、この日、トランプ氏の長男ジュニア氏はグリーンランドを訪れ、住民らと交流する様子をアピールした。

 グリーンランドは、どんなところなのか。人びとは、どんな思いでいるのか。ベルギーから北欧諸国や北大西洋条約機構(NATO)を取材する私は、1月中旬に現地へ飛んだ。

 グリーンランドの面積は日本の約6倍。その8割が氷におおわれ、沿岸部に約5万6千人が暮らす。18世紀初頭にデンマーク系の宣教師が移住して以来デンマークの統治下にあったが、1979年に自治権を獲得し、独自の議会と政府を持つ。

雪の積もった沿岸部にカラフルな家が並ぶグリーンランドの中心都市ヌークの街並み=2025年1月19日、グリーンランドのヌーク、森岡みづほ撮影

 中心都市ヌークの人口は約2万人。アイスランドを経由し、2日かけてたどり着くと、のんびりとした空気が流れていた。

 雪が積もった街には、黄色いバスやカラフルな家がよく映える。ショッピングセンターには、すし店もあった。

日本人に似た人びと、スーパーにはクジラ肉

 グリーンランドの人口のおよ…

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