ピロリ菌を除菌したのでもう大丈夫だと思っていたのに、胃がんで亡くなる――。そんなケースを防ぐための方法を開発し、精度を臨床研究で確かめたと、星薬科大(東京都)や国立がん研究センターなどの研究チームが発表した。人間ドックなどでの活用を目指し、メーカーと商品開発を進めるという。
なぜ発症?
ピロリ菌への感染は胃がんを招く大きな要因で、除菌によって発症のリスクは下がる。だが、除菌をしたにもかかわらず、そのあと年間1%前後の確率で胃がんが発生しているとされる。
中には亡くなる人もいる。除菌した時点で、すでに目では見えないような「がんの素地」が胃の粘膜にできていて、気づかぬうちにがんとなって進行してしまうためだ。
このため、除菌をした人にも定期的な検査が推奨されている。ただ、発症のリスクが高い人と、それほどでもない人を見分ける方法がなかった。
チームのこれまでの研究で、胃がんの素地となる重要な要因は、胃粘膜の細胞で起きる「DNAメチル化異常」という現象であるらしいことが分かっている。
DNAメチル化は、遺伝子の働きをオンオフさせるスイッチ役を果たしている。これが異常な状態になると、胃がんを抑える遺伝子のスイッチがオフになってしまい、がん化しやすくなると考えられている。
スイッチの異常、判断材料に
そこで、DNAメチル化異常のレベルを判断材料に、発がんのリスクがどれだけ高いかを予測できるようにすることを目指した。
臨床研究では、ピロリ菌の感染で胃粘膜の萎縮が進み、除菌をした男女1757人に協力を求め、粘膜の一部を採取。RIMS1という遺伝子を用いて異常のレベルを測定し、レベルに応じて4段階に分けたうえで、1年に1回の割合で5年間にわたり内視鏡で検査。胃がん発生との関連を調べた。
その結果、異常のレベルが最…