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月探査機SLIMに採用された衝撃吸収材の試作品を手にするコイワイの小岩井もれあさん=2024年3月21日、神奈川県小田原市、小林直子撮影

 町工場の技術が宇宙へ――。まるで小説やドラマのような物語を現実にした企業がある。

 今年1月、月面着陸を果たした宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月探査機「SLIM(スリム)」。そこで採用されたのは、神奈川県小田原市の鋳造会社「コイワイ」の技術だった。

 1973年に自動車業界でエンジニアとして働いていた小岩井守さんが「脱サラ」して、秦野市で立ち上げた小岩井鋳造所が前身だ。

 顧客から1個でも注文があれば応じる町工場。「人を喜ばせることやチャレンジすることが好きな人だった。もっとお客さんに近いところで仕事がしたくて起業したのでは」と守さんの孫でコイワイ企画室の小岩井もれあさん(40)。

 挑戦をいとわないのは創業時からのスタイル。現在のキャッチフレーズは「型にはまらない鋳物屋」だ。

 自動車業界の発展にともなって、90年代にかけて仕事の依頼が急増していた。一方、鋳造に欠かせない、木型をつくる熟練した職人は高齢化し、減っていた。「このままではお客さまの求めるスピードやクオリティーに対応できない」という危機感があった。

情報誌を見た社長は「これだ!」

 そこで鋳造の工程にデジタル…

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