今年4月にスタートした「医師の働き方改革」。勤務医の労働時間に上限を設けるなどして「医療の質」を保つ狙いがありますが、そのためには患者の理解も欠かせない、とされています。患者と医療従事者のコミュニケーションの向上に取り組む、認定NPO法人「ささえあい医療人権センターCOML(コムル)」理事長の山口育子さんに聞きました。
――これまで7万件近い患者からの電話相談に応じ、医療現場への提言などもされています。医師の働き方改革による患者への影響についてどう考えますか。
はっきりとは見えてきていませんが、今後、地域によっては救急現場が回らなくなるなど、様々な形で影響が出てくる可能性があると思います。
医師の働き方改革は、患者に密接に関わります。過労で寝不足の医師に診察してほしいとは、誰も思わないですよね。患者の側も、変わる必要があります。
――どうするべきでしょうか。
見直しが必要な患者側の課題は、三つあります。
一つは、医師による説明を夜間や土日に求める患者家族の存在です。
かつての医療は「治療は医師にお任せ」でした。でも、インフォームド・コンセント(十分な説明と同意)などの考え方が広まり、患者は医師から、病状や治療について、かなり詳しく説明されるようになっています。
「仕事を休めない」などの理由で、週末や夜間に、その説明を求める患者家族は多くいます。でも、これを続けていると、働き方改革のもとでは、医師は十分な説明ができなくなる恐れがあります。家族のために、仕事を短時間休んで病院に行くことが当たり前の社会になってほしいと思います。
患者の期待が医師に一極集中
――ほかに改善が必要な点は。
患者の期待が医師に一極集中…