(第107回全国高校野球選手権 日大三―県岐阜商)
いきなりチャンスで回ってきた。
二回無死一、三塁で県岐阜商の横山温大(はると)選手(3年)が打席に入ると、観客席から拍手が降り注いだ。
初球を豪快に空振りした後の2球目、低めの球をすくい上げた打球が右翼に飛んだ。少し浅かったが、三塁走者の宮川鉄平選手(3年)がスタートを切り、同点に追いつく犠飛となった。
「たくさんの人から応援してもらえるのはとてもうれしい。野球をやってて良かった」
この夏、横山選手に送られる応援は、ひときわ大きい。
自分で考え、磨いた技術
プレーを見ているだけでは、ほかの選手となにも違わない。準々決勝までの4試合すべてで安打を放った横山選手の左手は、生まれつき人さし指から小指がない。
兄の影響で野球を始めたのは小学3年生だった。
打席では「最後まで左手を離さないように。左手でしっかり押し込む。低く強い打球を」と意識する。
右投げだが、右手にグラブをはめて守る。ボールを捕ると、グラブを左手で抱え、瞬時に右手にボールを持ち替えて、投げる。手の入り口が広いグラブを丁寧に手入れし、中学時代から現在まで愛用している。
「中学1年のときに自分で考えた。何回も捕っては投げる、握り返すを反復してやりました」
右手に比べると、左手の力が弱いという。「左手の分までカバーできるように」と、右手を中心にダンベルやゴムチューブを使って鍛えてきた。
懸垂をする際はバーに左手首をひっかけ、右手で握る。藤井潤作監督は「自分で『大丈夫』と言って、工夫してやっている」と目を細める。
「人と違う分、人より努力しないといけない」と横山選手。持ち前の強肩を生かしつつ、独自の打撃技術をさらに磨いた。
戦後初の優勝へ「歴史塗り替えたい」
この春に初めて背番号「17…