21日の準決勝、日大三―県岐阜商 二回裏県岐阜商無死一、三塁、犠飛を放つ横山=大山貴世撮影

 (第107回全国高校野球選手権 日大三―県岐阜商)

 いきなりチャンスで回ってきた。

 二回無死一、三塁で県岐阜商の横山温大(はると)選手(3年)が打席に入ると、観客席から拍手が降り注いだ。

 初球を豪快に空振りした後の2球目、低めの球をすくい上げた打球が右翼に飛んだ。少し浅かったが、三塁走者の宮川鉄平選手(3年)がスタートを切り、同点に追いつく犠飛となった。

 「たくさんの人から応援してもらえるのはとてもうれしい。野球をやってて良かった」

 この夏、横山選手に送られる応援は、ひときわ大きい。

自分で考え、磨いた技術

 プレーを見ているだけでは、ほかの選手となにも違わない。準々決勝までの4試合すべてで安打を放った横山選手の左手は、生まれつき人さし指から小指がない。

 兄の影響で野球を始めたのは小学3年生だった。

 打席では「最後まで左手を離さないように。左手でしっかり押し込む。低く強い打球を」と意識する。

 右投げだが、右手にグラブをはめて守る。ボールを捕ると、グラブを左手で抱え、瞬時に右手にボールを持ち替えて、投げる。手の入り口が広いグラブを丁寧に手入れし、中学時代から現在まで愛用している。

 「中学1年のときに自分で考えた。何回も捕っては投げる、握り返すを反復してやりました」

 右手に比べると、左手の力が弱いという。「左手の分までカバーできるように」と、右手を中心にダンベルやゴムチューブを使って鍛えてきた。

 懸垂をする際はバーに左手首をひっかけ、右手で握る。藤井潤作監督は「自分で『大丈夫』と言って、工夫してやっている」と目を細める。

 「人と違う分、人より努力しないといけない」と横山選手。持ち前の強肩を生かしつつ、独自の打撃技術をさらに磨いた。

戦後初の優勝へ「歴史塗り替えたい」

 この春に初めて背番号「17…

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