シカの解体は一筋縄ではいかない。刃入れをわずかに間違えただけで、血が肉につき、味が台無しになる。人間のために殺された命。せめて「この人になら」と思ってもらえるよう丁寧に。大切に。
札幌から車で約2時間。北海道東川町に住む岩淵亜夕子さんは2年前、ジビエの解体処理施設を建てた。経営する隣のレストランで提供している。
町が設定した24年度の駆除目標頭数は200頭。エゾシカを駆除すれば、道や自治体から報奨金が支払われる。
解体施設ができてからは、埋設処理の他に、町内で食用肉に加工できる選択肢が生まれた。これまで、町はシカの尻尾や写真で駆除したことを確認していたが、そんな事務作業を省略でき、ハンターは自分で解体しなくて済むようになった。
「野生動物と適切な距離を保ち、殺すならせめて活用を」。岩淵さんは、手作業で1頭1頭解体していく。夏はジビエを使ったレストラン経営、冬は解体を中心に、命をどう扱うか考え続けている。
野生動物との付き合い方に興味を持ったのは今から十数年前に、東京から札幌に移住してからのことだ。
北海道では、ニュースでたび…