川端通商店街や櫛田神社の近くにひっそりと立つ冷泉荘(旧八木アパート)の外観=福岡市博多区、福岡市提供

 福岡市博多区にある「冷泉(れいぜん)荘(旧八木アパート)」が、国の登録有形文化財(建造物)に登録されることになった。戦後初期の鉄筋コンクリート造りの民間集合住宅の登録は全国初。

 国の文化審議会が19日、文部科学相に答申した。旧博多部に残る戦後復興期の貴重な民間集合住宅であり、地域の歴史的景観に寄与していると評価された。

 冷泉荘は1958年築の地上5階、地下1階の建物で、中洲近くの細道に建つ。一帯は福岡大空襲で焼け野原になり、戦後、商業の中心地として都市の不燃化をめざし、冷泉荘などの鉄筋コンクリートの建物がいち早く建設されたとされる。冷泉荘は当初、「八木アパート」という名称で、築7年後に現所有者に経営が移り、今の名前に改称された。居室は24あり、間取りは単身者から家族向けまで7タイプあった。部屋の配置や階段の形も東西で異なる。

 見た目は普通の古いアパートだ。所有する吉原勝己さん(62)は「何でもない民間賃貸の中にも、良い設計はたくさんある。国の文化財になれば、その建築的な価値の見方も変わるのでは」と期待する。

 吉原さんが父親から冷泉荘を受け継いだのは、2000年のこと。「繁華街が近いこともあって、建物は荒れ、地域のお荷物になっていた。空き室が多く、当初は『建物が古いせいだ』と思っていた」と振り返る。そのとき思い出したのは、雑誌で見かけたドイツやオランダでの、アパートのリノベーション事例。「古さにも価値を見いだし、生かしているのがかっこいい」と思った。実際に現地にも足を運び、新たなプロジェクトを始めようと決めた。

 2006年、当時の居住者に…

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