入社してから年齢を重ねるにつれて昇進していたが、50代になると給料が下がり、60歳で定年を迎える――。年齢を基準とした働き方に関するそんな固定観念を、お金の流れを使って変えようとする動きがあります。年齢問わずに社員にリスキリング(学び直し)と活躍の機会を与える企業は株価も上がるとの考えを提唱する、三菱UFJ信託銀行の星治氏(62)に狙いを聞きました。
――年齢を基準にした働き方を、なぜ変えようと思っているのですか
「ビジネスマン同士でよくある『何年入社ですか?』という質問は、もう辞めましょうと言っています。何歳の時には何をしないといけないという固定観念を如実に表している言葉です。人生100年時代と言われるなか、55歳になると管理職の肩書が外れて給料も下がる『役職定年』になり、60歳で退職という考え方はそぐわないと思います。時代に会社が追いついていません」
「国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2020年からの20年間で、15~64歳の生産年齢人口は7500万人から6200万人に減るとされています。東京都ひとつ分ちかくの人口が無くなるということです。日本の国際競争力はすでに世界38位に落ち込んでいるとされるなか、会社は役職定年で50代の給料を下げてやる気をそぐような働かせ方をしている場合ではありません」
――その流れを変えていくためには、まず何が大事でしょうか
「年齢に関係なく長く働くのであれば、個人が企業や組織に貢献しないといけません。それを実現するためには社員が自立的に学んで経験を積み、それを生かして活躍していく必要があります。1万人から回答を得た労働政策研究・研修機構の調査では2割弱しか自己啓発をしておらず、仕事が忙しい、会社で評価されないという声が多くを占めているのが現状です」
――どうすればリスキリングが広がりますか
「世の中のムードを変える必要があります。働く人はリスキリングしましょうということ、年齢で自分はこれをやると決めない意識を持つこと。一方で、企業の側でもリスキリングの機会を働く人に与えて、それをもとに活躍する場や報酬も与えないといけません」
「年齢問わず、十分に働く機会があれば老後の不安も減りますし、若い人も一時的に家庭に比重を置きたいといった選択がしやすくなり、閉塞(へいそく)感が減ります。今後の労働力を補うためには、社内の人に最大限働く機会を与えることが重要です。うまく学んでもらえれば会社の生産性も上がり、新しい事業にも乗り出しやすくなるでしょう」
――若手の活躍の場を奪うことにつながらないでしょうか
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