Smiley face
写真・図版
知恩院三門の楼上で説明を受ける俳優の本多力さん(左)=2024年10月2日午前11時57分、京都市東山区、新井義顕撮影
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 60回目を迎えた今秋の「京都非公開文化財特別公開」は、昨年のほぼ倍の28カ所で開かれる。京都市内の寺社など17カ所に加え、京都府北部の11寺社も参加する。開幕を前に、NHK大河ドラマ「光る君へ」に藤原道長の従者・百舌彦(もずひこ)役で出演している京都出身の俳優・本多力さん(45)が、知恩院と廬山寺(ろざんじ)を巡った。

知恩院の「三門」と「大方丈」の特別公開は11/1~10、廬山寺は11/11~24。拝観料はそれぞれ大人1千円、中高生500円。

知恩院三門 絶景と極楽浄土の世界

 まず訪れたのは浄土宗の総本山、知恩院。東山の華頂山(かちょうざん)のふもとに広大な伽藍(がらん)を構える。

 さっそく国内最大級の木造の門が現れた。高さ24メートル、幅50メートル。国宝の「三門」だ。江戸初期の建築の粋が集められた。

 急な階段を上って2階へ。眼下に京の街が広がる。

 「うわー、絶景ですね」と本多さん。知恩院執事の秦博文さん(78)は「ビルがなかった江戸時代は、二条城や御所など都全体を見ることができました」。

 穏やかな空気が、中に入ると一転する。そこは厳かな仏の世界。十六羅漢像などがずらりと並び、中央に冠をかぶった宝冠釈迦如来が座る。天井には、極楽浄土にすむという空想上の生き物・迦陵頻伽(かりょうびんが)や天女などが鮮やかに描かれている。

 しばしたたずんだ本多さん。「昔のものは色が失われることが多いけど、400年前の色彩がしっかり残っている。高い場所にあったここは、まさに極楽浄土だったのですね」

 知恩院は徳川家と縁が深い。現在のような伽藍を整備したのは、熱心な信者だった家康だ。本堂の御影堂(みえいどう)などは火災に遭い、3代将軍・家光が再建した。三門は2代将軍・秀忠の命で建立した。

知恩院大方丈 金の障壁画「まさに徳川」

 奥にある重要文化財の「大方丈(おおほうじょう)」も、家光が再建した。豪華な書院造りの建物は、将軍が参拝した際の対面所だった。

 キュッキュッと音がするうぐいす張りの廊下を進む。各部屋を飾るのは、全面に金箔(きんぱく)が施された「金碧障壁画(きんぺきしょうへきが)」。狩野派が描き、その数なんと166面だ。

 「二条城の書院と似たようなものを造ったのです」と秦さん。「再建できたのも財があればこそ。平安時代の藤原道長のようです」

 そして、将軍が座る上段の間には武者隠しも。「まさに徳川家のために造ったのですね」。本多さんは語った。

 特に印象深かったのは、どの建物も法要などで今も使われ、〝生きている〟ことだった。「400年たっても現役というのがすごいし、それが多分、意味のあることなんだと思います」

 一方で、使い続けると建物の傷みにつながり、風や雨を受ける三門はとくに劣化しやすいと教わった。

 いずれもふだんは保護のため非公開。今年は法然(1133~1212)が浄土宗を開いて850年の節目でもあり、同時に特別公開される。

廬山寺 紫式部の時代と今「つながってる」

 京都御苑のすぐ東にある廬山寺は、平安時代の作家・紫式部の邸宅跡に立つ天台系の寺院だ。

 「光る君へ」で、百舌彦としてまひろ(紫式部)の家を何度も訪れた本多さん。本堂の縁側で感慨にふけった。

 「この場所にかつてまひろさんが住んでいたかと思うと、つながってるんだなと感じました」。劇団に所属していた学生の頃、近くをよく通ったそうだ。

 寺がこの場所に移転したのは安土桃山時代。本堂は、江戸時代に仙洞御所の一部が移築された。「さすがに千年前の式部の建物は残っていません。でも、当時の空気感はあります」と執事長の町田亨宣さん(46)は話す。庭には紫色の桔梗(ききょう)が咲いていた。

 本尊は重要文化財の来迎(らいごう)阿弥陀三尊像(平安末期~鎌倉初期)。少し腰を浮かせて、臨終を迎えた者に駆けつける独特の姿を表している。

 特別公開では間近で拝観できる。手を合わせた本多さんは、感動で泣きそうになったという。800年前とは思えないほどきれいで、優しい姿に包み込まれるような気持ちだったそうだ。

 「応仁の乱や幾度もの火災にも遭った寺です。その度に『本尊だけは』と守ってきたのです」と町田さんは語りかけた。

「文化財の保存に、僕も一役」

 最後に、百舌彦が仕えた道長の邸宅「土御門第(つちみかどてい)」跡を目指した。実は廬山寺のすぐ近く。歩いて5分ほどの京都御苑にある。ここで「この世をばわが世とぞ思ふ」というあの有名な歌が詠まれた。

 特別公開では、拝観料が文化財の修理や維持に役立てられる。国の支援もあるが、各寺社の負担額は大きい。

 「文化財というと、何となく守られているものだと思っていました。でも今回、残すことが実は大変なんだと気づきました」と本多さん。「誰かが守り、誰かが修繕する。そういう『力』が必要なんですね。特別公開を通して僕も保存に一役買いたいですし、自分の子どもにも見せたい。そう思いました」(筒井次郎)

 ほんだ・ちから 1979年生まれ。実家は京都市内の寺院で9歳の時に得度した。立命館大在学中に劇団「ヨーロッパ企画」に参加し、俳優の道に進む。2005年の映画「サマータイムマシン・ブルース」以降、ドラマや映画に多数出演。NHK大河ドラマ「光る君へ」では初回から藤原道長の従者・百舌彦役を好演している。

秋の「京都非公開文化財特別公開」の案内

【期間】

10月26日~12月8日

【拝観受付時間】

午前9時~午後4時

※東寺は午前8時~午後4時半、八坂神社は午前10時~午後3時半、観音寺・安国寺・正暦寺は午前10時~午後3時(観音寺の説明は午前10時と午後2時の2回)、天寧寺は午後2時集合、智恩寺・縁城寺は午前10時と午後2時集合のグループ拝観(予約先は京都古文化保存協会、縁城寺の11月17日は午前10時のみ)

【拝観料】

(1カ所につき)大人1千円、中高生500円

※東寺講堂・五重塔は大人800円、高校生700円、中学生以下500円

※浦嶋神社は大人800円、中高生400円

※府北部10寺院のうち光明寺は無料、その他は800円

※泉涌寺は別途入山料500円必要

※朝日友の会会員は拝観料割引の特典あり

【主催】

・京都古文化保存協会

Tel 075・451・3313

http://www.kobunka.com/別ウインドウで開きます

・公開寺社など

【各種ご案内】

朝日新聞デジタル特集ページ

http://t.asahi.com/n1ir別ウインドウで開きます

朝日新聞デジタルの「ライフ」ページにある「寺社・文化財」コーナーでは、全国の寺社や文化財に関する話題をご覧いただけます。

◇公開が延期・中止されたり、公開場所や日程・時間などが変更されたりする場合があります。ご来場の際は京都古文化保存協会のホームページや公式X(旧ツイッター、@kyoto_kobunka)で最新情報をご確認ください。

◇特別公開拝観者を対象にした関連講演会の情報は、京都古文化保存協会のホームページでご確認下さい。

京都市内の17カ所、京都府北部は11寺社が公開

【京都市内】

上賀茂神社  10/26~12/8

大報恩寺(千本釈迦堂)  10/26~12/1

冷泉家(れいぜいけ)   11/1~4

廬山寺    11/11~24

下鴨神社  10/26~12/8

知恩院 三門  11/1~10

知恩院 大方丈・小方丈・方丈庭園  11/1~10

八坂神社   11/16~24

泉涌寺(せんにゅうじ) 舎利殿  11/9~12/1

智積院(ちしゃくいん)    11/23~12/8

東寺 講堂・五重塔  10/26~11/3

阿弥陀寺  11/1~10

隨心院   11/1~12/1

勧修寺(かじゅうじ)   11/1~10

元慶寺(がんけいじ)   11/1~10

鹿王院(ろくおういん)   10/26~12/8(11/6~14休止)

曇華院(どんけいん)門跡  11/18~12/8(11/25終日、12/6午後1時まで休止)

【府北部】

浦嶋神社(伊根町)  11/4~14

光明寺(綾部市)  11/20~24

安国寺(同)  11/20~24

正暦寺(しょうれきじ、同)  11/18~24

観音寺(福知山市)  11/16、18~24

天寧寺(同)  11/20~23

松尾寺(舞鶴市)  11/14~24

金剛院(同)  11/14~24

多禰寺(たねじ、同)  11/14~24

智恩寺(宮津市)  11/15~17

縁城寺(えんじょうじ、京丹後市)  11/15~17

map visualization

共有