DV被害に遭った男性の支援はどうあるべきか。ジェンダー論を専門とする広島大学准教授の北仲千里さんは、支援には男性特有の難しさがあると指摘する。NPO法人「全国女性シェルターネット」共同代表も務める北仲さんに、支援の現状について聞いた。
「男性ならでは」の難しさ
DV被害者数を数字だけでみれば、男性の被害者数は女性に比べてかなり少なく、マイノリティーであることは確かです。だからといって「支援の必要性が低い」とはなりません。一方で、男性ならではの難しさもあります。
たとえば、相談窓口には被害に困って相談にくる男性もいれば、逆に被害者である妻の情報を聞き出そうとアプローチしてくる加害男性もいます。そのため、窓口側としては「女性相談員だと危険だ」と敬遠したり、男性相談員に対応を任せようとしたりします。
ところが男性側には、被害に遭っていることを女性相談員に聞いて欲しいと思う傾向が強くあります。なぜなら「家庭の中でいじめられている」といった話は恥ずべきことで、男同士では話せない内容だからです。これはセクハラ相談も同様です。
もう一つは、そもそも男性にシェルターは必要なのかという論点です。女性の場合、何もかも捨ててシェルターに逃げ込む人もいますが、男性は仕事を捨てられないのではないでしょうか。一部の自治体がシェルターの代わりにホテルの部屋を提供していますが、こうした方法が現実的なのかもしれません。
恐ろしい「縦割り行政」の弊害
また、相談支援の担い手の問…