Smiley face
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 「恩赦」で刑期を終えていたのに、法務省の過失で約8カ月も余計に拘束されていた――。大阪府の男性(63)がこう訴え、国に550万円の賠償を求める裁判が大阪地裁で続いている。事実関係は国も認める。何があったのか。

 「刑期を超えていると伝え続けたのに……」

 男性は1999年、営利目的でヘロインを所持していたとして、タイの空港で逮捕された。2002年に「禁錮50年」の刑が確定し、タイの刑務所に服役した。

 タイでは国王による恩赦が頻繁にあり、受刑者が減刑される。男性も、少なくとも4回の恩赦を受けたという。8分の1を減刑、6分の1を減刑、7分の1を減刑……。男性は「恩赦のたびに、『あと何年』との通知を受けた」と話す。

「母と面会したい」日本の刑務所へ

 18年12月、男性に「国際受刑者移送制度」が適用された。

 日本とタイの間で結ばれた条約に基づき、本人の同意によって受刑者を引き渡し、残りの刑を母国で執行させるものだ。

 「刑務所から、一人暮らしのお袋と国際電話で話すたび、『いつぽっくり逝くかわからん』と言っていた。せめて日本にいれば面会はできると思った」

 帰国後、甲府刑務所(甲府市)に収容された。刑務所の担当者からは「刑期満了は2027年」と説明を受けた。

 一方で、日本大使館の職員からは移送前、「国王が代わり、少なくとも恩赦が2回はある。すぐに出られるはずだ」と言われていた。

 正確な刑期を知ろうと19年1月から東京地検、法務省、タイ王国矯正局などに計18回、手紙を送った。

 だが、なかなか返事が来なかった。

 「刑務官にも何度も問い合わせたが、まともに動いてくれなかった」

「刑期を満了している」

 21年4月1日。やっと届いたタイ王国矯正局からの返答には、こう書かれていた。

 「20年4月22日をもって…

共有