本を読んで生きている

 和歌山市の中心商店街「ぶらくり丁」かいわいに、本好きをうならせる選書で評判の書店「本町文化堂」があります。店舗2階にはイベントスペースを併設し、近くのミニシアターとタッグを組んで映画上映会や講演会なども催しています。店主の嶋田詔太さんが、オススメの本を通じて日常をつづります。

吉井勇「旅塵」から引用

「いくさ神和多志の神も聴きまさむ大き浦回の潮鳴の音」

 日本語の一人称である「わたし」は、戦前までは漢字3文字で「和多志」と表記されていた。それが戦後、「多」くの「志(こころざし)」を、調「和」させる日本人の精神性を恐れたGHQの統治政策により、「和多志」は「私」へと変更させられ、それが現在まで続いている。

 驚かれる人もいるかもしれない。ご安心ください。デマです。しかし、この「私」は「和多志」だったという、陰謀論に基づくデマは、4、5年前からSNSでじわじわと広がり、実際一人称に、この「和多志」を使用している人が今でもXやInstagramで散見される。

 仕事柄、戦前に出版された本も日々、目にしているが、もちろん、「和多志」などという表記は、ついぞ見たことがない。だからこそ、この「和多志」という話を、誰かが思いつきで作った、一種の駄じゃれのようなものなのだろうと、最近まで思っていた。

 ところが。先日、何げなく読…

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