東京外国語大学特任教授 吉崎知典氏
米大統領選でトランプ前大統領が当選しました。ウクライナや中東の戦乱、グローバルサウス諸国が台頭する世界は、どうなるのか。東京外国語大学の吉崎知典特任教授(国際安全保障)は、自由や民主主義の価値観を共有する国々の結集を呼びかけてきた日本の試みについて、「いずれにしても厳しい局面を迎えることになるだろう」と予測します。
――米大統領選の結果をどうみますか。
「史上まれな接戦」という予想とは異なり、トランプ氏の圧勝でした。安全保障という視点から見ますと、「米国第一主義」が再び台頭し、戦略的競争がグローバルに展開されるのは必至でしょう。バイデン政権のリベラルな政策との違いを強調し、同盟国への役割分担の圧力が強まるのは避けられないでしょう。日本も当然含まれます。
――米国に対する世界の視線はどう変化していますか。
今春から秋にかけ、クアラルンプール、アンマン、パリ、ロンドン、独ハンブルク、ウィーンを訪れ、「これほど、米国の信用が落ちた時期はかつてなかった」と感じました。中国やロシアなどの台頭、米国のイスラエル支援に対する批判などが背景にあります。
5月末から6月初めにかけてシンガポールであった「アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)」の直後、7月にクアラルンプールで、ASEAN(東南アジア諸国連合)などが主導する会議が開かれました。マレーシアにはイスラム教徒が多く、会議の雰囲気は、中国を批判するトーンが目立つシャングリラとは正反対でした。
ある出席者が「米国は宗教的な多様性を認めていない。バイデン政権が事実上の同盟国としてイスラエルへ肩入れし、パレスチナ和平を妨げている」と発言すると、大きな拍手が起きました。米国への反発と、それを論難する中国への同調がとても印象的でした。
米国は「力による現状変更からの守り手」だったはずなのに
――なぜ、世界の米国に対す…