全壊○棟、○人が避難――。被災の状況はとかく数字で語られがちだ。でも数字に表せない、日々生まれる「地味」で「細かい」私たちの悩みは、どうすれば知ってもらえるだろう。
昨年元日の能登半島地震。石川県能登町の実家で被災した大学生の答えは、意外にも「新聞」だった。
2月の最終週、金沢21世紀美術館(金沢市)であった金沢美術工芸大学の卒業制作展を訪ねた。自主制作アニメやゲームなどの展示がにぎやかな部屋の中央で、机に向かう人々が真剣な面持ちで読んでいたのが、新聞「MEDIUM(メディウム)(FOR NOTO)」だ。
ページをめくっていくと、見開き一面に印刷された真っ黒な森が目に飛び込んできた。地震直後に避難した高台で聞こえたという「ゴゴゴ」「バキバキ」といった音が書き込まれ、迫力に身震いした。
別ページの記事には文章の間に流木の写真があしらわれ、ビジュアルで訴えかける。
発行人の同大4年、坂口歩さん(22)が取材・撮影から紙面制作まで1人で手がけた。
創刊号のテーマは「HOME…