業種ごとに作られている「認知症バリアフリー社会実現のための手引き」。これまでに10業種で作成された

メディア空間考 松浦祐子

 「古い認知症観」とは、どのようなものなのか? あまのじゃくに自らに問いかけてみる。というのも、政府が6月20日に素案を示した「認知症施策推進基本計画」の核となるキーワードが「新しい認知症観」だからだ。

 約3年前、認知症専門サイトの編集長となった当初、認知症の人から「いつも困っているわけではないですから」と言われ、ハッとした。私自身、認知症になると何もできなくなるという先入観があったのだ。ゆえに会話の初っぱなから「お困りごとは何ですか」と質問してしまった。これまで人生を積み重ねてきた大人に対して最初に尋ねるには失礼で自尊心を傷つける問いかけだったと反省している。

 「何もできなくなる」のほかに「危険」や「怖い」といった誤ったイメージも認知症にはつきまとう。こうした認知症観が広がる一因になったとされるのが、1972年に発刊された有吉佐和子著のベストセラー小説「恍惚(こうこつ)の人」だ。映画化やドラマ化されたことが、社会により強い印象を根づかせることにつながったようだ。

 では、古い認知症観を払拭(…

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