「恐竜博士」として親しまれる古生物学者・真鍋真さん(65)が7月、2冊目となる翻訳絵本「はじめてであう きょうりゅう」(岩波書店)を出版した。絵本に力を入れるようになったきっかけは、東日本大震災の被災地での出合いだった。「自分の後半生の中でも大きな出来事のひとつでした」と振り返る。
東日本大震災からほどなく、津波被害に遭った岩手県陸前高田市に通い、がれきの中から市立博物館の標本と思われるものを見つけて拾い集め、洗浄したりするレスキュー活動に参加した時のこと。「恐竜の先生が来ている」と知った人たちから、「お話にきてほしい」と依頼があった。
被災地で読み聞かせ
いつものように、プロジェクターで講義を、と思ったが、当時の避難所や仮設住宅では使えなかった。「絵本を、紙芝居のように見せながら話そう」と、自身がかかわった数冊を携えて被災地へ出向いた。
おなじころ、福島県いわき市石炭・化石館(ほるる)では、「いわき自然史研究会」が、子どもたちを支える活動を始めていた。
いわき市では60年近く前、当時高校生だった鈴木直(ただし)さんが市内の地層で見つけた化石が「フタバスズキリュウ」と名付けられた。ドラえもんの映画にも登場したキャラクターのモデルにもなった首長竜で、後に新種と判明した。真鍋さんは、その研究チームの一員だった。
地震被害に加えて原発事故による遠隔地への避難もあり、「このままだと館や地域で見つかった化石などへの関心がなくなってしまう」と、いわき自然史研究会は危機感を持っていた。「僕も、お手伝いに行きます」と、真鍋さんは申し出た。
避難所となっていた体育館で…