【連載】フランスのリアル 麻薬危機編 第3回

パリで2025年4月6日、右翼「国民連合(RN)」を率いるマリーヌ・ルペン氏を支持する集会が開かれ、群衆に手を振るルペン氏。ルペン氏は被選挙権が5年間停止される有罪判決を受けた=ロイター

【連載】フランスのリアル 麻薬危機編

 フランスが麻薬に揺れています。密売は都市部から地方に広がり、市民が抗争の巻き添えになる事件も起きました。貧困や移民差別ともつながる麻薬犯罪は、政治を変えつつあります。麻薬の蔓延が生む危機は社会に何をもたらすのか。足を運んだ現場には、華やかなパリからは見えないもう一つのフランスがありました。

 「麻薬の密売は我々にとって悲劇の源だ」

 フランスの国民議会(下院)で麻薬犯罪を包括的に取り締まる新たな法案の審議が山場を迎えていた3月下旬、極右の流れをくむ右翼「国民連合(RN)」を率いるマリーヌ・ルペン氏(56)は与野党の議員に訴え、早期の法案成立を迫った。

  • 【参加者募集】フランスの「インビジブル・マイノリティー」(見えない少数派)を考えるオンラインイベント

 昨年6月に実施された欧州議会選でRNに敗れ、マクロン仏大統領は下院を突如解散。総選挙ではマクロン氏率いる与党勢力の中道連合が大敗し、RNは1千万票以上を得て政党単位で下院第1党に躍進した。「庶民」に寄り添う姿勢で党勢を拡大させるRNにとって、治安強化は有権者の支持を引きつけるための移民規制と並ぶ公約の柱だ。

 統一地方選が来年に迫り、再来年に大統領選が控えるなか、マクロン氏が求心力を失ったことで、フランスはすでに政治の季節に入っている。ルペン氏ら次期大統領の座を狙う政治家は、麻薬犯罪に対しての強硬な姿勢を競うようにアピールしている。

 与党に所属するダルマナン司…

共有
Exit mobile version