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大学入学共通テストの試験会場で「地理歴史・公民」の問題冊子配布を待つ受験生ら=2024年1月13日午前9時14分、東京都文京区、細川卓撮影

 「大学を無償に」「給付型奨学金の対象を増やします」――。家計の教育費負担を軽くする、と衆院選で各党が訴えています。海外とくらべて、日本が特に重いのが、大学授業料の家計負担です。

 日本の奨学金は「貸与」が中心で、卒業後に債務を背負ったまま社会人となり、返済に苦しむ若者が少なくありません。

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国の貸与型奨学金

 公費による学費負担を増やすべきなのか。いまの奨学金制度はなにが問題なのか。無償化へ向けた課題とあわせて、千葉大学の白川優治准教授(高等教育論)に聞きました。

課題1 対象が限定的

 ――給付型奨学金と授業料減免からなる修学支援新制度が2020年に始まり、今春からは多子世帯(扶養する子が3人以上)などに対象が拡大しました=図参照。今の制度にはどんな課題がありますか。

 新制度では、利用者は約34万人です。高等教育進学者の1割ほどで、対象が限定的です。今春から拡大された「年収600万円程度までの多子世帯の学生」と「私立の理工農系に通う学生」の人数は、まだ公表されていないので分かりません。しかし、大幅に利用者が増えるわけではないでしょう。

 現在の日本では、高等教育の費用負担はとても大きい。にもかかわらず、1割程度しか利用者がいない現状は、対象が少ないと思います。

課題2 急に対象外に

 またこの制度では、対象の学生に対して、支援の要件を満たしていることを定期的に確認することになっています。最初は制度の対象でも、学生自身がアルバイトを頑張るなどして収入が増えた結果、経済条件が基準を上回ったとして、支援から外れる学生もいます。制度が複雑で、どのくらい収入が増えると対象外になるのか学生には分かりにくい。加えて、対象外になった途端に支援がなくなります。緩和措置もほとんどありません。

  • 医療を学びたくて、頼った奨学金 「こんなに苦しまずにすんだかな」

 ――ほかにはどうですか…

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