日本の公立小学校の日常を記録したドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(12月13日公開)が教育先進国と呼ばれたフィンランドでヒット、海外の映画祭でも多数上映されるなど世界で注目されている。監督を務めたのは、山崎エマさん。イギリス人の父と日本人の母を持ち、大阪の公立小を卒業、中高はインターナショナルスクールに通い、アメリカの大学に進学した。そんな自身の強みは、小学校時代に学んだことに由来しているという。「小学校を知ることは未来の日本を考えること」と語る山崎さんが考える、小学校のあり方とは。
「基礎を学んだ」「教育が社会の未来をつくる」
――東京・世田谷の塚戸小学校を1年700時間かけて撮影したそうですが、なぜ日本の公立小学校を撮ろうと思ったのですか。
ニューヨークで働いて、「すごく頑張りますね」「時間通りに来ますね」「責任感がありますね」「チームワークが得意ですね」と言われて。どうして自分はこういう人間になったのかと考えた時、基礎を学んだのは小学校の6年間だったと気付いたんです。
元々自分の親も祖父母も先生で、教育が社会の未来をつくるという意識があった。小学校を見れば日本が分かるのではないか、と。だからこそ、「何年何組の○○先生」ではなく、学校丸ごと、しかも特別なことをやっているから取り上げるのではなく、典型的なところを、と考えました。
――映画では、教科を教える授業以外の時間を中心に取り上げています。
取材や準備期間を含めて4千時間ぐらい学校にいましたが、実際に見たり聞いたり感じたりした学校のリアルがどう伝えられるのか。自然と、国語・算数・理科・社会といった教科ではない時間が中心になりました。撮影でも、たとえば6年生が1年生の面倒を見るなど、突発的に起こるすき間の時間をなるべく把握して撮っていくことを心がけました。
撮影はちょうどコロナ禍が重なり、最初の半年はアメリカなどではまだほとんど学校が開いていなかった時期でした。1年半くらい学校が閉まっていた国もある中で、なぜ日本はここまで早く開いたのか、何が違ったのか。それは、日本は学校という「場所」がないと学べないものがたくさんあるからではないか、と。オンラインで勉強だけできればいいのではなく、そこで何を学ぶのか、教育の概念や優先順位が違うのではないかと思いました。
当たり前にあるすごさ 外に出て気付いた
――撮影を通して様々な気付きがあった、と。
世界的に見ればまだ「集団」…