「蔵出し式」で披露された幻の酒「三笑」=2024年4月12日、兵庫県宍粟市一宮町能倉、雨宮徹撮影
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 兵庫県宍粟市一宮町能倉にある庭田神社で12日、江戸後期~昭和50年代に造られながら一時途絶え、近年になって復活した日本酒「三笑(さんしょう)」の蔵出し式があった。関係者約30人が出席して、地場産品を食べながら試飲するなどした。

 三笑は、同市山崎町に実在した酒蔵「本家門前屋」が約150年にわたって手がけてきた銘柄だ。中国の故事で、話に夢中になって時も場所も忘れ談笑するさまを表した「虎渓(こけい)三笑」に由来して名付けられ、長らく親しまれてきた。昭和50年代初頭から造られなくなり「幻の酒」になったが、2018年に山崎町内にある別の二つの酒蔵がよみがえらせた。

 復活した三笑は、原料米に地元・宍粟産の「兵庫夢錦」を使い、水も地元の清らかな水を利用して、発酵させてできる。市の交流人口を増やそうとの思いから、市内の酒店や「道の駅」、スーパーなどでしか直接販売しておらず、買うのも飲むのも「地元限定」にこだわっているのが特徴になっている。

 蔵出し式は、8世紀に成立した「播磨国風土記」の一節から「日本酒発祥の地」とされている庭田神社にちなんで、毎年開かれている。関係者が神事や鏡開きをした後、鹿肉のジビエ料理など特産品を楽しみながら試飲した。

 二つの酒蔵のうち純米吟醸酒を手がける老松(おいまつ)酒造の前野久美子専務は「きれいなお酒でスッキリした辛口になりました」と話した。いずれも税込みで、1800ミリが3190円、720ミリが1650円、300ミリが638円になる。

 生酛(きもと)純米酒を手がける山陽盃(さんようはい)酒造の壺阪雄一専務は「キレがあり、ライトなおいしさがある。裾野の広い酒になりました」と話した。同じく税込みで、1800ミリが2970円、720ミリが1650円になる。(雨宮徹)

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