金沢を中心に石川県内の若手工芸作家やアーティストの活躍がめざましい。元々工芸が盛んで「工芸王国」とも称されるが、最近は特に新しい表現を含む作家の活躍が目立ち、県外から移り住む作り手も多いという。その背景を探った。
ルーツは江戸時代初期
金沢と工芸の歴史は、江戸時代初期にさかのぼる。加賀藩が金沢城下に武器や武具の管理・修理をする「御細工所(おさいくしょ)」を設置。戦乱が終わり、装飾美術や工芸の振興に重点を置き、象嵌(ぞうがん)や蒔絵(まきえ)などの工芸品を生み出していったことが現在の礎になっている。
昨年秋に金沢市の国立工芸館で開催された「心象工芸展」では、作家6人のうち、重要無形文化財保持者(人間国宝)の中川衛さんを含む3人が金沢市在住だった。「意図して地元から選んだわけではなかった。それだけ全国的に活躍している人が多いことの表れ」と同館の岩井美恵子・工芸課長は言う。
作家の人数やレベル、層の厚さを挙げ「金沢では現代作家だけの横軸の展示が開ける。他の地域では現代作家1人を含めて作品を歴史的に並べる縦軸の展示はできても、横軸はなかなかできない」といい、「全国から美術関係者が訪れるが、そろって『石川盛り上がっているね』と言われる」と話す。
同展にガラス作品を出品し、国際的に活躍する芸術家の佐々木類さんは、高知県出身。2017年から金沢の工房で指導員などを務め、金沢在住は7年以上になる。
拠点とした理由の一つとして…