宮城県気仙沼市で開かれた「新しい地方経済・生活環境創生会議」であいさつする伊東良孝・地方創生担当相=2025年1月25日、宮城県気仙沼市、南有紀撮影

 「これからは、楽しい日本を目指していきたい」。肝いり政策の地方創生をめぐり、石破茂首相はこの表現を多用する。「女性と若者に選ばれる楽しい地方に」とも強調するが、その「楽しさ」、どうにもピンとこない。

 1月下旬、「新しい地方経済・生活環境創生会議」が宮城県気仙沼市で開かれた。この日のテーマは「『若者・女性にも選ばれる地方』をつくる」。現地の取り組みには学ぶべきものがあったが、それらをどう政策として生かしていくか、まで踏み込むには時間が足りなかった。だが、次の会議ではすぐに別のテーマに移った。どこまで本気で向き合うつもりなのか、正直、まだ分からない。

 各地でジェンダーギャップ解消に取り組み、会議にも登壇した「Will Lab」の小安美和代表は「楽しい」という言葉について「それこそ、若者や女性に聞いた?って問いたい」と苦笑する。「価値観が多様化する中で」と政府はうたうが、その多様さの解像度が低いのではないか、というのだ。「政治の場には女性が圧倒的に少ない。この言葉が刺さらないのは、その裏側に、子どもがたくさんいて声がたくさん聞こえて楽しい、みたいなおじいちゃんたちの発想が見えてしまうからじゃない?」

 「楽しい」という言葉は、作家・評論家の故・堺屋太一氏の著書からの引用だ。同氏は55年前の大阪万博の立役者として知られる。失礼ながら、その時代の男性の言葉を、これからの女性や若者たちの未来を考えるキーワードにするのは無理がないか。小安さんの話を聞き、「楽しい」を多用する官邸幹部の中に女性がほとんどいないことを、改めて考えさせられた。

 首相自身の言動を振り返って…

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