(10日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 聖カタリナ0―1岡山学芸館)
1点を追う八回表、この回の先頭打者の香川清孝選手(3年)がバットを振り抜くと、打球は左翼線へ。迷いなく一塁を回った。際どいタイミングだったが、二塁に頭から滑り込んでセーフ。ベンチへ向かって満面の笑みで、右拳を振り上げた。
「チームを鼓舞する意味も込めた。とにかく有馬(恵叶(けいと)投手=3年)を助けたかった」
五回表には、中前へしぶとく落とすチーム初安打。「打てないんで、あまり好きじゃない」という打撃が振るった。
しかし、チームが勝つために必要な「自分のプレー」は、捕手としてのリードや守備だ。
球速146キロが表示されるなど、この日の有馬投手は直球がさえており、直球中心に配球を組み立てた。二回は1死一塁で、打者を空振り三振に取った直後に、二盗を試みた走者を刺してダブルプレー。有馬投手はボールが先行すると投げ急ぎがちになる。何度もマウンドへ行って間を取り、ピンチを脱した。
唯一の悔いは、1ボール2ストライクから打たれた決勝の中犠飛。有馬投手の決め球フォークで空振りを取りたかった。投球は求めた通り落ちたが、地面にバウンドしない高さだった。「もう1個下に投げさせておけば。カウントが有利だったんでショートバウンドでよかった。自分のジェスチャーが足りなかった」
試合後の取材に開口一番、こう答えた。「楽しかったのひと言です」
「小さい頃から憧れていた夢の舞台でした。グラウンドに立ってみて人もいっぱい入っててびっくりしたけど、自分のプレーができたので楽しかったです。あと打てたんで」。笑顔で甲子園を後にした。(中川壮)