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森巣博さん

 死刑とは国民の名で行われる殺人なのに、その執行を国民が刑務官に代行させている現状は不正義だ――ばくち打ちとしても知られる作家の森巣博さんは、そう考える。それでも世論の多数が死刑制度の存続を望むというのなら、いっそ執行を国民の義務にして「市民参加の死刑執行」へ転換すべきだ、とも。一体、どんな提案なのか。

死刑は国民の名で行われる殺人

 私は死刑という刑罰に強く反対します。死刑は、国民の名で行われる国家による殺人だからです。

 いわゆる先進国では、ほとんどの国で既に死刑は廃止もしくは停止されており、今も執行を続けているのは米国と日本だけです。その米国も全50州のうち半数以上で廃止・停止。韓国には死刑制度があるけれど、1997年の執行から停止しているとされます。

 林芳正官房長官は先日、死刑制度を廃止するのは適当ではないと述べたそうです。国民世論の多数が死刑を「やむを得ない」と考えていることを理由に挙げた、と報じられました。

 8割の世論が死刑制度を支持しているのだから制度を存置しておいてよい。そんな容認論がいまだに幅を利かせているとは……。死刑は殺人だという自覚が決定的に欠如しているとしか言いようがありません。

「市民参加の死刑執行」という選択

 そうであるなら、自覚を持っ…

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