「家庭教師のトライ」を運営するトライグループ(東京)が、水俣病に関する誤った内容の教材を使っていた問題で、同社の幹部2人が25日、熊本県水俣市を訪れ、初めて公の場で説明と謝罪を行った。
午前9時20分、楠瀬大吾・執行役員と伊藤元洋・九州地域本部長が水俣市役所を訪れた。
応対した高岡利治市長は、問題が発覚した後の対応の遅さや不十分さを指摘。「環境省から指摘があって、初めて(対応に)動かれた印象。おわびや訂正も見えにくい」と伝えた。
これに対して楠瀬氏は、謝罪文を教材サイトのトップページに掲載しなおしたことや、アプリ版と動画サイト版の教材を差し替えたことを説明。「全社員にオンライン研修を実施した。社内のチェック担当者も増員する」などと説明した。今後、水俣病の語り部との学習会も予定しているという。
午後1時からは、問題を最初に指摘した「水俣病被害者・支援者連絡会」と面会した。
山下善寛代表代行は「水俣病は来年で公式確認70年になる。たしかに風化したかもしれないが、水俣病は終わっていない」と冒頭で訴えた。
トライ側は、6月に社内研修を開いたと説明したが、参考にした資料は環境省や熊本県など行政のものだと明かした。これに対して山下氏は、「(原因企業の)チッソが不当な見舞金契約で終わらせようとした水俣病の歴史は学んだか」とただすと、楠瀬氏は「具体的なことは学べていません」と言葉を詰まらせた。
一方で、「これを機会に、水俣病を学ぶ教材づくりを一緒にできないか」という提案も患者側から出された。楠瀬氏は「前向きに検討したい」と応じた。
午後4時からは4人の胎児性患者と会った。松永幸一郎さん(61)は「日ごろ、学校に行って水俣病を伝えているが、ああいった間違った情報(発信)があると、なんのために伝えているのかと思う」と苦言を呈した上で、「ちゃんと改善してほしい」と注文した。
夜は、被害の伝承活動などを続ける団体や個人が新たに立ち上げた「水俣・差別偏見を考える会」と面会した。