「8年前、人生が大きく変わった。信頼を失い、仕事を失った」
8日午後、『五体不満足』の著書で知られる乙武洋匡(ひろただ)氏(48)は、衆院東京15区補欠選挙への立候補を表明する会見で、週刊誌で複数の女性との不倫を報じられた過去に自ら触れた。その上で「政治不信が蔓延(まんえん)する中、まっさらな状態で勝負をする方がふさわしい」として無所属での出馬を表明。現時点でどの政党にも推薦依頼は出していないと説明した。一方、後ろには乙武氏擁立を主導した小池百合子・東京都知事とのツーショットのポスターが並んだ。国政の政党色を避け、「小池カラー」を全面に打ち出した形だ。
同補選は、公職選挙法違反の罪で有罪判決が確定した柿沢未途前衆院議員=自民党を離党=の議員辞職に伴うもの。地域政党「都民ファーストの会」を率いる小池氏は3月29日の会見で、自民で相次ぐ「政治とカネ」の問題を念頭に、「政治という意思決定の場を変えていくのはとても重要だ」と述べ、「ゲームチェンジが必要だ」と力を込めた。そんな様子に、自民関係者は「自民が落ち込むと、小池さんは元気になる」と漏らした。
「不戦敗」の汚名、隠したい自民
「乙武さんを出すことにします。よろしく」。会見前日の28日夜、小池氏は自民、公明両党の都連幹部に電話をかけ、協力を求めた。今月2日、自民の茂木敏充幹事長は党として乙武氏を推薦する意向を表明。自民にとっては2回続けて議員の不祥事が発覚した選挙区で、さらに裏金事件の逆風も受ける。「誰が出ても勝てる可能性は限りなく低い」(東京選出の衆院議員)との見方が広がっていた。候補の擁立作業が難航するなか、小池氏が担いだ乙武氏に「相乗り」すれば、「不戦敗」の汚名を隠すことができるとの思惑があった。
一方、今夏の都知事選をにらむ小池氏にとっても与党との連携はメリットが大きい。関係者によると、自民都連会長を務める萩生田光一前政調会長は小池氏に対し、都知事選で3選をめざす場合は支援する考えを事前に伝えたとされる。
小池氏は都知事選で与党の支援を期待?
乙武氏をめぐり利害が一致し…