韓国で8年前に刊行され、翻訳出版された日本で倍近く売れている漫画がある。家父長制が残り、男性優位とされる韓国社会に生きる女性2人の葛藤と友情を描いた「大邱(テグ)の夜、ソウルの夜」。作者を招いたトークイベントが高松市で開かれたのを機に、国境を超えて共感が広がる理由を探った。
作者は女性漫画家ソン・アラムさん(44)。韓国で2017年に刊行されたこの作品の日本語版を22年に出した出版社「ころから」(東京)がトークイベントを企画。国際女性デー前日の3月7日夜、高松市の書店「本屋ルヌガンガ」で開かれた。
「今も読んでいただいているのがうれしく、また驚きです」。参加者と向き合ったソンさんは、そう切り出した。定員20人は口コミですぐ埋まり、大半が女性だった。
物語の主人公は、韓国の地方都市大邱で、両親や祖母と同居しながらライターを志望するコンジュと、ソウルにひとりで暮らし、自由奔放に生きるホンヨンの2人。就職や結婚、育児、親の老いなどを通して「女性であるがゆえの生きづらさ」に直面しつつ絆を深めるシスターフッド(女性同士の連帯)の物語だ。
「韓国では今、ジェンダー認識の急激な変化が起きています」。ソンさんは作品の背景にある空気感をそう表現した。
「母と娘」の依存と愛憎
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