日本銀行の植田和男総裁は、今月9日で就任1年を迎える。その日を待たず、11年に及んだ「異次元緩和」から転換し、「普通」の金融政策への移行を果たした。次の焦点となる追加利上げはいつか。長年の緩和の功罪をどう評価するのか。市場との対話のあるべき姿とは。植田氏に問うた。
日本銀行総裁 植田和男さん
1951年生まれ。東大経済学部教授を経て、日銀審議委員を98年から7年務めた。23年4月に第32代日銀総裁に就任。戦後初の学者出身の総裁となった。
- 利上げ判断、夏から秋にも 植田日銀総裁「物価目標の確度高まれば」
――3月の金融政策決定会合で、11年続いた大規模な金融緩和を終えました。その判断の理由は何ですか。
「物価情勢が好転し、それに合わせて政策の枠組みを対応させたということに尽きます。ここまで強い異例の金融政策は役割を果たし、終了させてよいという判断に至ったということです」
――判断材料には、33年ぶりの高水準となった春闘の賃上げ率があると思います。まだ回答は大企業中心ですが、中小企業への波及をどうみますか。
「集計結果には中小企業の回答もある程度含まれていて、昨年より、かなりはっきり強い結果になっています。そのうえ、中小企業は大企業の動向をみて決める傾向があります。大企業中心の結果が非常に強いということは、ある程度プラスの影響を及ぼすと期待しています」
春闘の結果「夏から秋にかけて物価に反映」
――足元の日本経済をみると…