子どもたちとひとしきり遊んだあと、「よさげな枝」を拾ってポーズをとってくれた奥田健次さん=長野県佐久市、篠田英美撮影

応用行動分析学者 奥田健次さん(52)

 長野県のJR佐久平駅から車で約20分。田んぼの真ん中に、その小学校はある。

 シロツメクサがぼうぼうと生える校庭で昼休みを楽しんだあと、5時間目の授業を終えた1年生たち。担任の「スタート!」の号令に合わせ、体操服から制服へ、一心に着替えていた。

 着替えが終わった一人ひとりのタイムを読み上げながら、担任は「さすが」「速いね」「丁寧だね」と褒める。残り数人になると、子どもたちから「がんばーれ、がんばーれ」と声援がわき起こる。「早くして!」というかけ声は、一度も聞こえない。

 今年4月に開校した、西軽井沢学園さやか星小学校。1~4年生22人が通うこの学校がちょっと変わっているのは、心理学の「応用行動分析学」を全面的に取り入れていること。ダメなことを叱るのではなく、よい行動を褒める。

 「教育の当たり前を変えたいんです」

 人生はいばらの道だった。「正しいこと」を言うといつも殴られた。5歳から継父に殴られ、教師からは「出ていけ」と言われた。同級生からもいじめられた。

 小学3年の時、教室で服を脱がされ、抵抗して暴れた拍子に足元のガラス窓が割れた。いじめっ子も、笑いながら眺めていた子も誰ひとり、教師に真実を話さなかった。「ガラスを割ったお前が悪い」と説教され、2時間も正座を強いられた。

 あの時感じた、力の不均衡を傍観する社会への絶望と怒り。それが原点であり、原動力だ。

 大学では、研究不正を内部告発して干された。海外で研究する道は、アカハラによって絶たれた。逆境に陥るたびに発想を転換。「今に見てろよ」と闘争心が燃えあがる。

 応用行動分析学とは偶然出会った。

27歳で確信「直せないものは、ない」

 子どものころから幼いきょう…

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