Smiley face
写真・図版
中学校の授業で乳がんと向き合った体験を話す彦田かな子さん

 彦田かな子さん(54)は10年前、乳がんと診断された。「つらくて怖い」といったイメージから、抗がん剤治療を拒みかけたこともある。そんな彦田さんはいま、地元・名古屋の図書館で「みんなのがん教室」を開き、学校でのがん教育にも取り組んでいる。きっかけとなったのは、子どもたちの「一言」だった。

 彦田さんが、乳がんと診断されたのは、2014年夏。当時がんに対する知識は乏しく、ドラマや本を通じた「死」というイメージくらい。主治医にも何を質問していいかわからなかった。

 抗がん剤治療を勧められたが、「怖い」「苦しい」。そんな印象しか持てず、思わず「やりたくない」と拒んだ。

 だが、それでいいのか。

 抗がん剤治療に詳しい専門医の講演を聴きに行った。2時間じっくり話を聞いて気持ちが変わった。「がんに対する情報が『わからない』『つらい』だけだと逃げてしまうこともある」。痛感し、治療を受けることにした。

 左胸の全摘手術が決まっていたが、「自分のことでいっぱいいっぱい」だった当初、小学生と幼稚園児だった3人の子どもたちにがんのことは伏せていた。だが手術をすれば、わかってしまう。子どもたちに伝えると、思わぬ一言が返ってきた。

 「僕たち、知っていたよ」…

共有