手元の時計で、およそ3秒間。
3時間あまりかかった試合の中の、そのプレーだけが、目の奥にいつまでも焼きついている。
場面から描く。
4月1日、バンテリンドームナゴヤであった、中日にとって今年最初の巨人戦。1―1の同点の七回裏、中日の攻撃だった。
先頭の中田翔が左翼線へ二塁打を打ち、無死二塁。代走に指名されたのが、昨年から中日でプレーする上林誠知だ。
1点を争う展開で、打者は7番の村松開人。最も考えられる送りバントを、中日ベンチも選択した。
初球を転がしたが、巨人の左腕・井上温大の前への打球がやや強い。捕球した井上はためらうことなく、三塁へ球を送った。
二塁走者を刺せるという井上の判断は正しい。グラブに送球を収めた三塁手の中山礼都が、ベース前にグラブを添えて待つ。上林は頭から突っ込むが、セーフになるタイミングではない。
ところが、ファンの落胆のどよめきが、大歓声に変わった。
三塁塁審が手を横に広げたからだ。
村松のバットにボールが当たってから、三塁ベース上でのクロスプレーまでの時間。それが3秒間。
何が起きたのか。
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「あの短い時間の中で、思考…