北朝鮮の分析で知られる米国のマーティン・ウィリアムズ氏が今月、米シンクタンクのスティムソン・センター傘下の北朝鮮専門メディア「38ノース」で北朝鮮の美容整形に関する論文を発表した。法律や関係者の証言を基に、北朝鮮で美容整形が活発に行われている実態を指摘した。風紀を重んじ、取り締まりが厳しい北朝鮮でなぜ、美容整形がはやるのか。
- 写り込んだ「不都合な真実」 仏カメラマンが撮った北朝鮮
- 北朝鮮、「ハローキティ」に酷似デザイン販売 サンリオ「無断使用」
ウィリアムズ氏によれば、2024年に入手した北朝鮮のスマートフォンに、16年に制定された「整形外科治療法」の条文が残されていた。論文では、国内法の存在は、美容整形が公式に認められ、法規定が必要なほど広まっていることを意味するとしている。
この法律の規定では、傷痕の修復だけでなく、「審美的に外観の美しさを向上させる」目的での手術も認めていた。ただ、国家統制の問題からか、顔の形を完全に変えたり、指紋を変えたりする手術は禁じられている。また、「健康で美しい外観」を持つことは、「わが国の大衆中心の社会主義体制の本質的な要求」としている。
「美容整形は、髪を染めるよりも安全」
北朝鮮で神経科医師として働き、12年1月に韓国に逃れた崔政訓(チェジョンフン)・韓国高麗大学公共政策研究所客員研究員は「美容整形は女性を中心に人気がある」と語る。崔氏は「北朝鮮でも、二重まぶたの形成や目の下のたるみや皮膚のしみ取り、歯並びの矯正など、幅広く行われている」と指摘する。
崔氏によれば、北朝鮮の人々は「美しければ美しいほど、人生の問題が簡単に解決する」という言葉をよく使う。脱北者の手記や証言によれば、北朝鮮では容姿端麗な女性を万寿台(マンスデ)芸術団やピパダ(血の海)歌劇団の俳優として選抜。そのなかから、少なくない数の女性が、党や政府、軍の高官の子どもの結婚相手として選ばれているという。
近年は流入した韓国ドラマの影響から、北朝鮮では服装や髪形を韓国風にアレンジすることもはやっている。街頭のあちこちにいる糾察隊(キュチャルデ)と呼ばれる風紀取り締まり係に見つからないよう、こっそり独自のファッションを楽しんでいる。脱北者の一人は「美容整形は、髪を染めたり、韓国と同じような服装をしたりするよりも安全だ」と語る。
若々しく美化された最高指導者の肖像画
一方で、北朝鮮では医薬品が…