第107回全国高校野球選手権(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場した新潟県代表の中越は、初戦で昨夏準優勝の関東第一(東東京)に1―6で敗れ、目標の甲子園での勝利はかなわなかった。中越は1994年の76回大会で2勝を挙げて以来、出場した6大会すべて初戦敗退。全国との差はどこにあるのか。
強豪との地力の差を見せつけられた試合だった。初回に先頭打者の堤歩力我(ありが)(3年)が二塁打を打ち、犠打と暴投で1点を先制したが、打線に連打が生まれたのは五回だけ。それでも序盤は先発の雨木天空(そら)(3年)が変化球を効果的に使い、強力打線相手に打たせて取る投球でしのいだ。
だが、中盤以降は暴投や失策などミスが相次ぎ試合の流れがじょじょに相手に傾いた。この試合の失策は4、暴投も2で、五、七回のミスは失点にも絡んだ。安打数は中越の6に対して相手は7とわずか1本差。盗塁も0に抑えるなど、警戒していた相手の打撃力や走力に対応していただけに、このミスが悔やまれた。
春の県大会から中越の戦いぶりを見てきた。守りが堅く、4番で主将の窪田優智(3年)ら上位打線には力があり、県内のライバルチームをややリードしていると感じた。新潟大会では、準決勝、決勝を接戦でものにする粘り強さも見せていた。
大会本部によると、中越の初戦となった13日の入場者数は4万8400人。初戦敗退が決まった後、二塁手の清水悠利(3年)は「甲子園の観客の多さと大歓声に圧倒された」と打ち明けた。守備の際に「視界に走者が入り、(打球の処理に)あせってしまった」とも話した。中盤以降に続いたミスは「聖地」ならではの独特の雰囲気が選手から平常心を奪ったことが原因ではないだろうか。
だが、見せ場を作れなかったわけではない。堤は相手エースから長短打3本を放ち、清水や窪田ら内野陣が際どい打球を好捕し、アウトをもぎ取る場面もあった。
昨夏の選手権では、初出場の新潟産大付が初戦で強豪の花咲徳栄に逆転勝ちしたが、2017年の99回大会以来、新潟勢の勝利はこの試合のみとなっている。大舞台でも平常心で野球を楽しむために何が必要なのか。その難しさをあらためて突きつけられた試合だった。