2024年の「新語・流行語大賞」の候補にもノミネートされた「カスハラ(=カスタマーハラスメントの略)」。客による著しい迷惑行為などを指す言葉だ。働く人の心身に重大な影響を及ぼし、業務への支障や離職につながる恐れもあるなどとして、社会問題になっている。
民間企業のほか地方自治体でも対策が課題となるなか、著書「カスハラの犯罪心理学」がある第一人者の桐生正幸教授(東洋大)は「札幌市の取り組みは先進的。自治体だけでなく、企業にも有益な内容」と高く評価する。市には全国各地から問い合わせが相次いでいるという。
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「カスハラ対策基本方針」公表
「要望や意見には、利用者のそれぞれの事情に配慮した上、真摯(しんし)に耳を傾け、丁寧に説明するなど適切な対応に努めます」
「その中でカスハラが行われた場合には、職員を守るため、複数の職員で対応する、職員からの相談に応じるなど組織的に対応します」
「状況に応じて、警告を行う、対応を中止するなど毅然(きぜん)と対応します。さらに、悪質と判断される場合には、警察へ通報する、弁護士に相談するなど法的に対応します」
今年9月、札幌市は「市職員カスタマーハラスメント対策基本方針」を公表し、対応の原則をこう明記した。
あわせて、弁護士の助言も得て全37ページのマニュアルも策定。カスハラの類型や「膠着(こうちゃく)状態になってから30分後を対応中止の目安とすることがある」「正確な記録のために会話を録音する場合、その旨を相手方に告知する」などの対応例や判断基準も具体的に示し、「行動チェックシート」「対応手順」「報告書」などの図表やひな型もつけた。
秋元克広市長は背景について「極めて暴力的な行動、頻繁に時間の限度なく色々な申し出をいただくといったことへの対応が多々出てまいりました」「理不尽な言動があれば組織として対応せざるを得ず、職員を守っていかなければならないことを明確にさせていただいた。市民の皆様にもご理解いただきたい」などと会見で述べた。
記事後半では、「先進的」とされる札幌市の取り組みや、桐生教授のアドバイスを紹介します。
カスハラ対策に悩む自治体
地方自治体は▽市民の命に直…