東日本大震災の津波で、宮城県石巻市立大川小学校の児童74人と教職員10人が犠牲になった。家族を失う体験をテレビや新聞の取材に語ってきた女性が、二つの映画を撮った。見せる側に回った被災者が、フィクションとドキュメンタリーで、見られる側の内面を届ける。
佐藤そのみ監督は、6年生だった2歳下の妹を亡くした。震災前から映画監督を志していた。日本大学芸術学部を1年間休学し、念願だった地元での映画作りに充てた。
「被災遺族として評価されるのは嫌」だったが、脚本を書くうちに「震災と正面から向き合わないとダメだ」と腹をくくり、「春をかさねて」をつくった。
震災で妹を失った14歳の2人。祐未(斎藤小枝)はマスコミ取材に応じ、れい(斎藤桂花)はボランティアの大学生が来ると化粧をしている。不満がぶつかりあうが、本心をうまく言えない葛藤をともに抱えていた。
震災を題材にした映画は意識して見てきた。優れたものもあったが、泣きながら悲しみをむき出しにするなど「被災地の人はこんなこと言わないよ」と思うものもあった。「感情が整理されすぎだな。わかりやすい感動の音楽も流れるし」
自身も、インタビューを受け…